至らなかった話

かすりもしなかった話(その2)

(前回の話はこちら

そのスキーの帰り。
日付にすると、2月中旬の夜のことです。
新幹線の車内では、仲間のうち何人かがぼそぼそ話している他は、みな疲れて眠っています。
ただ、例のY子の姿がしばらくありません。
なんとなく
(今年も女子から義理チョコしかもらえないかな)
などと考えているうち、Y子が座席に戻ってきました。
夜遅くに新幹線が東京に着き、そこで解散となりました。
新幹線に乗っている間ケータイの電波の状態が良くなかったようで、解散した後で溜まっていたメールが何件も一気に来ました。
その中に、なんとY子からのメールもあるのです。
発信時間を見ると、例の新幹線の中。
そしてメールには、こんなことが書いてありました。

「sucameさんに渡したいものがあるので、もしよかったら○号車のデッキまで来てください」

・・・!?
そういえば明日はバレンタインデー!
ま!
さ!
か!
Y子が勇気を振り絞って僕に告白するつもりが、僕がバカなせいで!
いかん、すぐメールしなければ!

「ごめんごめん!新幹線の中電波が良くなかったみたいで、いまメール見たよ!」

Y子の返事はこうでした。

「あ、いいんです。ごめんなさい」

これはまずい!
Y子が告白しやすいように仕向けてあげなければ!

「あ!じゃあ、お詫びに今週いつかメシおごるよ!」

と、水を向けました。
すると、

「じゃあお願いします」

ということになりました。

さて、問題の日。
仕事が終ってY子と待ち合わせ、自分の知ってるお店で飲みました。
最中ずっと(いつ来るか・・・いつ来るか・・・)と、ずっとドキドキわくわく。
でもY子は世間話ばかりで、一向に本題に入ろうとしません。
結局お別れの時間になってしまいました。
うーん、この意気地なし。
じゃあ僕が手助けしてやろう。

「あ、そう言えば、新幹線では何か用事があったんじゃなかったっけ?」

んもう、こんなこと言わせないでくれ。
するとY子。

「あ、そうだ。すみません忘れてました」

このー、見え透いた嘘を!さあ来いさあ来い!

「はい」

Y子から手渡されたのは温泉まんじゅうでした。

「えっと、どしたの?これ」

「スキーでお世話になったんで、お礼に土産屋さんで買ってあったんです。どうぞ召し上がってください」

ええっと・・・・・・。

(つづく)

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